P.A.WORKS Blog

有頂天日記 8月25日

【有頂天家族】第八話『父の発つ日』をご視聴いただきましてありがとうございました。
「泣けた」という反響が多かったですね。
総一郎と赤玉先生の別れのシーンが沁みますなあ。
僕も原作の第五章を読んだときから泣けたので、このシーンの映像は楽しみでした。

「なるほど。乳ではなく、父か…」
人力車の車夫の首が180度回転しているのも好きです。
この人力車は矢一郎が父から譲り受けた宝物ですからね。
きっと父も乳が好きだったのでしょう。

そんな訳で、本日の写真はラストスパートの本社です。

先週の水曜日にオーディオコメンタリーの収録がありまして。

「こんな立派な父親を持った子どもたちは大変だろうな」
森見登美彦氏がぽつりと笑っておりました。
そうなんです。僕の引っかかっている謎はそこなんです。

 【有頂天家族】には未解決の謎がいっぱいあります。
ネタバレになるので今は書けない謎もあるけれど、第八話視聴後にも次々と『?』が湧いてくる。

総一郎が矢二郎に言った「なんとかしてみよう」とはどんな策だったのか?
なにゆえ子どもは四人で、しかもみんな男なのか?
なにゆえ矢二郎が選んだのは蛙だったのか? 
なにゆえ冥界に通じる井戸を選んだのか?
なにゆえ森見登美彦氏は偉大な総一郎を鍋に落とさなければならなかったのか?
偉大な父の死は子どもたち、あるいは森見登美彦氏にとってどんな意味があるのか?

僕の興味は刺激され、『?』の答えを導くために勝手に物語を妄想する。
これがこの作品の魅力の一つですね。
その『?』は、ひょっとすると【有頂天家族】第二部、第三部で明らかになることがあるかもしれないけれど、自分の経験に照らし合わせて腑に落ちる『?』の答えを探るのは面白いものです。
用意された解答があるわけではない。
人それぞれの『?』の答えを促す鷹揚な器がこの王道物語にはあるのです。

 えーと、今回は第八話の視聴を終えて、父であり洛中狸界の王、偽右衛門でもあった偉大な下鴨総一郎と四人の息子たちのことを考えてみます。

森見登美彦氏は、下鴨四兄弟それぞれの中に自分の一部があると言います。
父総一郎は「おまえたちに俺は四つの血を分けた」と矢二郎に語ります。
ということは、父と子の親子関係ではなく、森見先生自身の中の父的な部分と、
ちょっと残念な子供たちの部分の関係という見方もできないかしらん?
と思いまして。

この関係は、一人の人間の意識を司る自我と、個人的無意識に潜むコンプレックスとの関係にも似ていると思うんですね。
コンプレックスは劣等感と訳すのかと思っていましたがこれは違うようです。
それは劣等感コンプレックスというのだそうですが、長くなるので省きます。
どうやらコンプレックスは無ければよいかというとそういうものじゃないらしい。
内面に抱えるコンプレックスを自我が制御、統合していく過程を経て人間は成長するのだそうです。

 僕の身近な制作現場に置き換えてみると、監督とスタッフの関係にも置き換えられますね。
いろんなスタッフが参加して、みんなそれぞれに好みや主張があって、その複合体(コンプレックス)が作品の制作チームである。
その中で全体の共通認識を作りながら一つの纏まりに繋ぎとめているのが監督の方針なんですね。
監督がチーム全体の意識を司る自我ということになります。
自我がコンプレックスを制御する力が弱いと、精神のバランスが崩れるように、監督の統率力が弱ければ、スタッフのバラバラな主張を調整できなかったり、力関係のバランスが崩れて制作チームとして機能しなくなる。

だからと言ってコンプレックスを潰してしまっては、自我との間に前向きな統合と成長が見込めないように、監督とスタッフの間に良い相乗効果は生まれないのです。
時間をかけて牛乳と珈琲の配分を探りながら、珈琲牛乳ができるまで何度も腹を下しながら「運命の出逢い」を待たなければなりません。

 「こんな立派な父親を持った子どもたちは大変だろうな」
というのもなんとなく解かりますよね。
あまりに自我が制御する力が強すぎては、コンプレックスを力で抑え込んでしまうように、監督の統制力が強すぎたり、スタッフの創作エネルギーを必要としないような天才監督では、スタッフから監督に流れる創作意欲を抑制してしまうってことに置き換えられるのかなあ。
何事も制作現場に置き換えないと理解できない頭で考えるとそうなります。

そういえば、先日の吉原監督との対談で森見先生が言われていたことを思い出しました。

自分の頭の中で考えたものだけで作っていたら底の浅い物語になってしまう。
自分の意識していない、もっと無意識の部分から湧き上がってくるものを大切にしたいと。

森見登美彦氏自身が内部に抱えている総一郎と下鴨四兄弟を、この森見作品の創作手法に置き換えるとどうなるだろう。
小説家として創作はこうあるべきだという理想が総一郎で、無意識から湧き上がる阿呆パワーが下鴨四兄弟であるとするならば。
森見登美彦氏の総一郎に対する強い憧れと、その統制によって阿呆パワーとの「運命の出逢い」が損なわれることを嫌う抵抗。
森見先生は自身の中にある理想の総一郎像に対してアンビバレントな気持ちを抱えているのかしらん?

ああ、そうか!
それで森見登美彦氏は自分の創作スタイルを貫くために、自らの手で憧れの理想を鍋に落してサヨナラしたのではないか。
自分の中にある理想を葬ってまでも、阿呆パワーの生命力を大切にしたかったのではないか!

もちろん、先生に訊けばそんなことは考えたことも無いと言われるでしょうけれど、これは僕の『?』の答えを導く妄想の物語だからいいのです!

 そして、この物語に続きがあるとすれば、憧れの総一郎を失った大きな悲しみと苦しみの後に、森見登美彦氏の中にはいずれ第二の総一郎が誕生するはずです。
総一郎ほど理想的な狸じゃないけれど、無意識から湧き出る阿呆パワーを適度に制御しつつ、「頭の中で考えた物語」との運命の出逢いを上手く演出できる器の大きな狸がね。
それが狸界の死と再生の、物語の王道だと思うのです。
それが【有頂天家族】では、矢一郎なのか、あるいは矢三郎なのか、はたまた第三の狸の王の登場か!?

堀川

月, 8月 26 2013 » P.A.WORKS Blog » コメントは受け付けていません。

有頂天日記 8月22日

自分の担当話の納品が終わり、一息ついてる今日この頃、一息つきすぎて先週のブログ更新を忘れていました。

 

1銀閣です。

 

そういえば、山本さんと渡邉さんは今週更新していないので、5銀閣で罰ゲームですよね。

 

先日、相馬Pとの雑談中、こんな話が出ました。

 

「5銀閣溜まっても、捲土重来Tシャツって何気にカッコいいし着るだけじゃ罰ゲーム感ないよなぁ?渡邉もそろそろだし、何なら2人揃って打ち上げで『銀閣山本と金閣渡邉のショートコント』とか」

 

 

 

・・それ、やりましょう!

 

作品が始まる前に動いていた相馬P発案の「極秘ぷろじぇくと」が停滞中の今!

 

この危機を乗り越える術はそれしかないです!

 

先輩方の勇姿、楽しみにしております。

 

 

 

毛利

木, 8月 22 2013 » 有頂天日記 » コメントは受け付けていません。

有頂天日記 8月20日

こんにちは松子です。

先日、社長の日記で出ていた【金銀閣の招き猫】!とっても欲しいです!
とある和菓子屋さんで、私も【招き猫】を発見しました。

【招き猫モナカ】!!テンションあがって二個も買ってしまいました(^U^)

さて、先週は五山の送り火でしたね。

2年連続で五山の送り火を取材で見ていたので、今年は見れなくて残念でした。

皆さんは行かれた方はいらっしゃるのでしょうか?

2年前のロケ写真↓ (遠くのマンション上から撮ってみたり・・・)

1年前のロケ写真↓ (鴨川沿いまで近づいてみたり・・・)

もう、『有頂天家族』も後半戦に入ってまいりましたね!
私は、先日発表されましたコンテ集・原画集作成に励んでおります。

本編同様、早く皆様の目に届けられるようにがんばります!

火, 8月 20 2013 » 有頂天日記 » コメントは受け付けていません。

有頂天日記 8月18日

うっほほーい!
今晩は【有頂天家族】第七話-『銭湯の掟』の放送ですね。
物語の本筋もいよいよ加速して、これから最終話まで目が離せない展開になりますので最後までお見逃しなく。

 先週の8月13日火曜日のこと。森見先生が猛暑の中、富山本社に陣中見舞いに来て下さいました。ひゃっほーい!

 昼食を五箇山でとったついでに相倉(あいのくら)合掌集落に寄ってみました。
というのも、ここでは現在夷川阿呆兄弟人形の制作が進められているからなんですね。

 森見先生を南砺市のどこにご案内しようかと考えていたところ、商品企画開発部の山田から、ちょうど夷川兄弟人形の着色作業が始まったと聞きまして。
なんと、まるで森見先生の来訪に合わせたようじゃないか。これぞまさに天佑神助!
行って見ようということになりました。

 実は僕も初めてみました、五箇山和紙の金閣銀閣招き猫!
ひとつひとつが伝統工芸士の前崎真也さんの手作りなんですね。
どれも個性的な顔をしているところが金閣銀閣らしいです。
籠に並んだ着色中の軍団が夷川親衛隊のようでした。

 この日、人形の仕上げに「捲土重来」と「樋口一葉」の四文字熟語?を首からぶら下げた完成品第一号が、前崎さんから夷川阿呆兄弟の生みの親に手渡されました。

 このとても愛くるしい五箇山和紙人形が気に入って、山田に「矢二郎蛙も見たいなあ」と呟いてみましたが、彼女は僕と目を合わせようとしませんでした。
「それは・・・ムニャムニャ」とよく聞こえません。
何故だろう?
伝統工芸士の前崎さんは、金閣銀閣の制作と並行して来年の干支の和紙人形を何千個も作っているようで、これから年末までが超繁忙期なのだそうです。
どこも手作り工芸の職人は人手が足りないんですね。

 P.A.WORKSで商品企画を始めてから僕もたまに「こんな商品が欲しい」希望を出すのですが、商品企画開発部のスタッフには僕の(その場の)思いつきが悩みのタネのようです。
「スタッフ記念品は熊鈴がいい」とか、「泉水子に扇で舞って欲しい」とか、「風神雷神で弁天に扇いで欲しい」を実現するのは製造コスト的に大変なんですって。
「せっかくだから伝統工芸的な素材で作りたい」、というのも企画開発スタッフが頭を抱えている理由なのかしらん?
だって、手に取った人の「喜ぶ顔が見たいからだ!」

 そんな訳で、風神雷神の扇は美術のBambooさんにリライトしていただいき、京都の扇屋さんにお願いしております。
色の忠実な再現でやりとりしているようですね。
9月の京まふに試作品が間に合えば、弁天役の能登麻美子さんにはヒラヒラと舞っていただき、高笑いで会場をひと扇ぎしていただきたいですね!

 富山本社では森見先生と吉原監督の対談が行われました。
【有頂天家族】の制作が始まって以来、沢山のインタビューや質問を受けているお二人なので、今回は趣向を変えて「お互いに訊いてみたいことはありませんか?」と振ってみました。
先生がどうやって物語を紡いでいるのかが垣間見えて、個人的にとても興味深い話しが聞けたと思います。

 吉原監督は言います。【有頂天家族】というアニメーション企画の器を自分一人だけでは開発できない。
自分には無いものをスタッフが持っている。それを吸い上げてまとめながら作っていると。
 森見先生は言います。自分の頭の中で考えたものだけで作っていたら底の浅い物語になってしまう。
自分の意識していない、もっと無意識の部分から湧き上がってくるものを大切にしたい。それらがより明るい輝きを放つように繋いで物語をつくりたいと。
アニメーション監督が外部のチームと対話する作業を、作家は個人の内面に向けて一人で掘っているんだと知りました。

 普段自分が意識していない無意識の部分-深層心理には深い物語のタネが沢山埋まっているんでしょうね。
作家を職業としている人は、それを掘り起こして多くの読者が共感できる普遍性のある物語として書くことができる人なんだろうな。

 この森見登美彦氏×吉原監督対談は、【有頂天家族】設定資料集に掲載する予定です。
こちらも現在急ピッチで制作中。

 設定資料集は、P.A.WORKS作品の設定アーカイブを作ろうと思い、作品毎に作るようになりました。
話数毎に関わったスタッフリストや、スタッフが当時何を考えながら制作したかも対談やインタビューの形で記録しておきたいなあと考えています。
第1話から最終話まで、【有頂天家族】の各種設定や美しい美術ボードを余すところなく掲載したいと思います。

 それとですね、全話の絵コンテ集も制作中です。
全13話中9話の絵コンテを吉原監督自身が書いています。
これからクライマックスに向けて洛中の狸たちが大暴れします。
既に完成している絵コンテどおりに制作するのは容易なことではありませんが、最終話まで観ていただいた皆さまが大満足していただける作品になるよう、スタッフもみんな頑張っています。

 駆け足でしたが、本日はP.A.WORKSで進行している【有頂天家族】の商品開発の様子を中心にご紹介しました。
 他にも井上俊之さんの原画を抜粋した【有頂天家族】井上俊之原画集を企画していのですが、それはまた次の機会にご紹介したいと思います。
では、今晩の放送をお楽しみに!

堀川

日, 8月 18 2013 » P.A.WORKS Blog » コメントは受け付けていません。

有頂天家族 8月16日

先週、ついにブログをお休みしてしまった…私も1銀閣だ。

そして、今週はまさかのブログ総崩れで全員に1銀閣。

いやまて、しばし。珍しく銀閣山本だけ、ちゃんと出しているではないか。

見習わねば。でも彼は4・銀・閣だけどねっ!(金閣風)

 

さて、先週の6話放映に合わせ、バンダイチャンネルさんにて1話~6話の一挙放送が行われたのは記憶に新しい。

 

私も久しぶりにこれまで制作してきた話数を見直した訳であるが、

まったくもって制作当時の事が思い出せなかった。

なぜかと言うと、私の頭は既にところてん方式となっており、Dの事を記憶するとAの事が抜け落ちていっているからだ。

決して、物忘れが酷いとか、若年性アルツハイマーとかではない。

まぁ、ところてんの話は良いのだ。

 

驚いたのは翌日である。

 

一挙放送を受けてか、DVD・Blurayの予約数がかなり上昇した。

こんな上がり方は見たことがない。素直に嬉しかった。

 

我々は「有頂天家族」に勝負を賭けている。

そして制作しているものに自信と誇りを持って世に送り出している。

無論、どの制作会社でも、どの作品でもそういった多くの人の想いを乗せて作品は世に送り出されている。

 

しかし、それらが多くの人の目に触れられ、ビジネス的な結果を出すという事が、全ての作品に与えられるものではない事もまた理解している。

アニメ制作のプロである以上、ビジネス的な結果を出して次の作品制作に繋げなければならない。

常にそんなプレッシャーと隣り合わせのスタッフにとって、良い結果が出てきていると感じられた。

 

だが、まだまだ「有頂天家族」はここからが本番なのである。

7話以降、さらに面白くなる。さらに泣ける。さらに笑える。さらに考えさせられる。

とにかくぶっ飛んでいる。もう現場も火星までぶっ飛んでテラフォーミングしそうな勢いなのだから。

 

どうか最後の最後までこの作品を見て欲しいのです。

そしてアニメーションの持つ力を信じたいのです。

宜しくお願い致します。

 

と、たまにはラインPらしいことを言ってみた、金曜の夜。

 

 

相馬

 

 

金, 8月 16 2013 » 有頂天日記 » コメントは受け付けていません。

有頂天日記 8月12日

銀閣山本です。

 

4銀閣リーチ。

もう後がありません、頑張ります。

 

さて、ここ最近凄まじい猛暑が続いています。

40度を超える地域も出てきているそうな。

あの気象庁が無理な運動や作業は控え、こまめに水分を取って熱中症に十分注意するように呼びかけているそうです。

まぁ、インドアの自分たちにはあまり関係ない話ではあるのですが、ちょっと外に出る度熱気でくらくらしてしまう暑さはご容赦願いたいところです。

気温が上がる午後を中心に各地で大気の状態が不安定になる見込みで、局地的に雷を伴って激しい雨がふるおそれがあるそうです。

なるほど、確かに窓から外を見てみると雲行きが怪しくなってきています。

また誰かが【風神雷神の扇】を使ったのかな。

 

そしてこの猛暑の中に行われたコミックマーケット84

【有頂天家族】のグッズも販売されていましたね、今そのグッズをお持ちの方には

どんな暑さにも負けない熱い心を持った戦士として、熱い声援と篤い称賛と尊敬の念を贈らせていただきます。

おめでとう、あなた方は強い!

まさに阿呆の血のしからしむるところだ。

 

 

まだまだ猛暑が続きますが

頑張っていきましょう。

 

もう4銀閣なので

これからはずっと月曜ブログありますよ。

多分。

 

山本

 

月, 8月 12 2013 » 有頂天日記 » コメントは受け付けていません。

有頂天日記 8月11日

【有頂天家族】第六話『紅葉狩り』をご視聴頂きましてありがとうございました。
弁天の魅力が沁みる回でした。
能登麻美子さんの弁天は怖いくらい迫真の演技ですね。

「登場人物の中で誰に一番惹かれますか?」と、最近二度訊かれまして。
ふーむ、今は矢三郎と弁天の関係かなあ。

【有頂天家族 公式読本】で森見登美彦氏は言う。
「実はこの作品で一番書きたかった恋は、弁天に対する矢三郎の叶わぬ恋です」
…へ? 原作者はなにゆえ矢三郎の恋を叶えぬのか?
たいていの森見作品では主人公の恋は成就するではないか。
「だって私は人間だもの」
そりゃ詭弁だ!
だって森見登美彦氏は、狼と人間の女性の恋が成就するアニメに感動し、2012年7月25日にコップから溢れるほどの涙を流したと自身のブログで告白しているぞ。
狼ならよくて狸であったら何故だめなのか?
責任者に問いただす必要がある。責任者はどこか。
まあ落ち着こう。

そもそも矢三郎は弁天にいつ惚れたのか?
第1話を見ると洛天会ビルの屋上で一目惚れしたようだ。
桜の木の満開の下で出会う女に惚れてしまうのは、森見作品の登場人物の性か?
美しく謎めいた女に弱すぎるぞ!
いったい矢三郎は捉えどころのない弁天のどこに魅かれたのか。

森見登美彦氏は弁天役の声優、能登麻美子さんとの対談で本音を打ち明けている。
「弁天という人は・・・・僕にもよくわからない人なんです」
なーんだ。じゃあ、恋に堕ちた理由は矢三郎自身にも解かるまい。おしまい。
いやいや、そうは言っても原作者の撒いたパズルを解くのがファンの楽しみというもの。
僕の『弁天さんの魅力研究ノート』はしばらく抽斗にしまっておいて、矢三郎のことも考えてみよう。
矢三郎はイイやつだ。俺は矢三郎を愛しているよ。
下鴨総一郎の血を受け継ぎそこねた、ちょっと残念な子供たちの中で、作者自身の学生時代を投影したと言う矢三郎とはどんなキャラクターか。
他の兄弟が抱えているような悩みが矢三郎にはあるのかしらん?

P.A.WORKS前作の【RDG】の制作中、荻原規子先生の作品から、神話や心理学にも興味を持ちまして。
これが物語の創作やキャラクター造形には示唆の宝庫だったんですね。

神話や伝説や昔話によく登場するイタズラ者のことを『トリックスター』と言うようです。
創作では停滞する物語の事件軸を動かすのに便利なキャラクターです。
河合隼雄の著書【コンプレックス】からトリックスターの説明を引用しますと、

「トリックスターは、善であり悪であり、壊すものであり作り出すものであり、変幻自在で神出鬼没、全くとらえどころのないものである。低次元にとどまるときは、単なるいたずら好きの破壊者であり、高次においては、人類に幸福をもたらす文化英雄となる」

むむむ。これを言い換えられないだろうか。
人助けもすれば悪さもする。
「一族の誇りとはなんぞや。俺には分からんね」
古い狸社会の秩序の破壊者であり、新しい狸社会の創造者にもなる。狸と天狗と人間社会のどこにでも顔を出し、三社会を繋ぐ役割を担っている。
化けるのが得意ないたずら者で、中でも弁天に命懸けのイタズラを仕掛けることを生き甲斐としている。
今のところは何がやりたいのか本人にも解かっていないが、ひょっとすると将来阿呆嵩じて崇高となり得る存在。
そうか。矢三郎はトリックスターなんだ。
だが待て、しばし。

 もう一人。矢三郎と意気投合するかと思えば平気で狸鍋を喰らう。
いまや京都天狗界を睥睨し、狸に最も恐れられる半天狗は、金曜倶楽部のメンバーでもある。
ぱつんぱつんに膨らませた癇癪玉をもてあまし、「つまんない!つまんない!つまんない!」と当たり散らしたかと思えば、月を見上げて訳もなく泣き出す。
「欲しいものなんか、何一つ手に入らないわ」
目的もなく刺激が欲しいだけの傍若無人な駄々っ子が、もしこの先変わる事件が起こるとすれば、矢三郎との関係か、新たなキーパーソンの登場が必要なのかしらん?

 こうして比べてみると矢三郎と弁天はどこか似ている。
【有頂天家族】をひと味もふた味も面白くしているのは、この二人のトリックスター性もあるのかな。
二人とも「何かまだ足りない」日常に刺激ばかりを求めているけれど、目的があるわけではない。
自分の物語を創出できない現代の気分を代弁しているようにも見える。
このお互いのもやもやとした気分を先刻承知の二人だから、好敵手として惹かれあうのも自然なことではないかと思える。
けれどこの恋は最後まで叶わぬらしい。
ふーむ。なにゆえか。

 森見登美彦氏は、この【有頂天家族】で王道の物語を目指したとインタビューで答えている。
物語の王道とは何か。
人間と狸と天狗には、大昔から物語を紡いできた歴史がある。
大昔から消えることなく語り継がれてきた物語の中には王道の『力』がある。
神話や民話や昔話の中には王道がある。
そう考えると、過去の王道の物語からトリックスターを見つけて、矢三郎や弁天と比べてみれば面白いかもしれないな。
これからの矢三郎と弁天が辿りうる物語が見えてくるのかもしれないぞ。
二人にはどんな結末が考えられるのか。
矢三郎には将来阿呆嵩じて崇高となる布石があるけれど、弁天には今のところ見当たらないのが僕の個人的な気がかりなのです。
そこに弁天がわけも無く「哀しい、哀しい」と呟く理由も見えてこないかしらん?

森見登美彦氏自身にとっても「僕にもよくわからない人」だった弁天は、これから王道の物語の先を書き進めるうちに明らかになっていくこともあると思うんですよね。
2007年に先生が20代の勢いに乗って発表された【有頂天家族】から6年の歳月が経って、ご自身を投影した矢三郎や、ご自身が「一週間くらなってみたい」と思われた弁天が、ご自身とともにどう変化を遂げていくかを楽しみに待ちたいのです。

堀川

月, 8月 12 2013 » P.A.WORKS Blog » コメントは受け付けていません。

有頂天日記 8月8日

明日は担当話のV編です。

 

なんなんでしょう・・。

 

こう・・。

 

とりあえず、胃は痛いです。

 

 

 

がしかし、たった二十数年の人生だが、こんなにハラハラドキドキワクワクが同時に降りかかってくることなど、そうそう経験できることではない。

 

 

 

自分は幸せ者だ。

 

P.A.WORKSに入社し、そうそうに本社スタジオに所属。

 

お手本となる上司がいて、刺激を与えてくださるクリエイターさんの作業を間近で見ることができ、若さはじける総務の皆さんに加えて、面白い専務までいる。

 

・・最高です。

 

そして、右も左もわからないまま振られたこの担当話。

 

話に聞けば、【有頂天家族】の中でも1,2を争うほどの大事な回だと・・。

 

「そんな重要な回をなぜ新人に?」と誰もが思うだろう。

 

それもそう、なにより自分がそう思ったのだから。

 

しかし考えようによっては幸運なことなのかもしれない。

 

そう、これはチャンスなのだ。

 

そう思うことにし、残りも全力で取り組んでいきたいと思います。

 

 

毛利

木, 8月 8 2013 » 有頂天日記 » コメントは受け付けていません。

有頂天日記 8月6日

こんばんは松子です。

先週末、親戚の結婚式で京都に帰りました。

その機会を利用して、行ってまいりました京の七夕!絶賛開催中です!

「有頂天家族」のポストカードがコラボで売られてましたね^_^

時間がなくて、夜に見にいけなくて残念でした。

是非皆様も行かれてみてはいかがでしょうか。

 

松子

火, 8月 6 2013 » 有頂天日記 » コメントは受け付けていません。

有頂天日記 8月4日

【有頂天家族】第5話『金曜倶楽部』をご視聴頂きありがとうございました。
僕も三嶋亭で高級すき焼き食べたい。

それにしても森見作品の登場人物は鍋ばかり食べていますな。
狸鍋、猪鍋、牡蠣鍋、キムチ鍋、豆乳鍋、闇鍋、火鍋、あんこ味のエビ、マシュマロまみれの白菜、蝦蟇、ニシキヘビ…
夏でも冬でも鍋鍋鍋鍋鍋鍋猫ラーメン鍋鍋鍋鍋猫炒飯鍋鍋…
僕は再び問うてみるのです。森見登美彦氏にとって鍋とは何かと。
えっ? 作者が考えるのが面倒だからいつも鍋なんじゃないか?
この際いいんです、正解なんて。

森見先生がご自身のブログに書かれていた通り、水曜日にオーディオコメンタリーの収録がありました。
そこで、『ああ、そうか!』と思いついたことがあるので忘れないうちに記録しておこう。

【有頂天家族】の放映が始まってから視聴者のみなさまの、「【有頂天家族】いいね。雰囲気が好き」という反響を良く目にします。
森見作品が僕らを気持ちよくさせてくれる『雰囲気』の正体見つけたり。
あ、その場の思いつきですからね。
今回の『鍋』にもヒントがあるんじゃなかしらん?

「冬の鍋というものは誰の心をも分け隔てなく、温かく包み込んでくれるというものだ」【太陽の塔】

僕らは「鍋」という単語から温かさ、団らんをイメージするじゃないですか。
同じように、森見作品に散りばめられた単語や小物からは、「温かさ」「柔らかさ(優しさ)」を連想するものが多くありませんか?
小さくて、丸くて、柔らかい小物、毛玉、おっぱい、達磨、お酒、子猫、恋、クリスマス、お祭り、薔薇色のキャンパスライフ、蛾を掴んだときの‘むにゅっ’とした感触、ソフトボールサークルの名前は「ほんわか」だし、四畳半は桃色図書で溢れている。
ふくふくと笑う彼女、ふわふわと浮かぶ弁天。
「彼女のまわりは温かく、静謐であり、神様の好意に満ちて、たぶん良い匂いがする」【夜は短し歩けよ乙女】

もちろん小説では文体やリズムの心地よさがありますよ。
それに加えて、森見登美彦氏が散りばめた言葉や小物がもたらすイメージで、僕らは何だかほっこりとした気分になるんじゃないかしらん?
だから、たとえ煮詰まった腐れ大学生たちの灰色の青春物語でも、読者の僕らには、その日常は幸福感に彩られて見えるんじゃないかしらん?

あ、そうか。まずこれらの単語を紙片に書いてみる。
そして、机の上にカラーチャートを広げて、単語からイメージする色の上に紙片を配置してみたらどんな結果になるんだろう。
【きつねのはなし】のような毛色の違う作品を除いて、多くの森見作品の言葉は明るい暖色系で構成されているような気がするぞ。
お、ひょっとして、【有頂天家族】の美術から受ける色の印象-カラフルで、柔らかくて、ヌケが良くて、明るい背景美術は、森見作品の文章を色に変換した世界観を実にうまく再現しているんじゃないだろうか。そう思えてきた。
それがたくさんの視聴者の印象、「雰囲気が好き」に今のところ一役買っているんじゃないかな。
以上、今週の思いつきを記録しました。

オーディオコメンタリーで、森見先生ご自身は自己分析のようなことはあえてしないと言われる。
原作者自身にも説明のつかないもの、明確にしたくないものがあるらしい。
その領域は巨人の進撃に備えて高い城壁で防御していることもブログで知りました。
そういえば文庫本の【有頂天家族】に解説を寄稿している劇団ヨーロッパ企画の上田誠氏も、のっけから途方にくれている。

「森見先生の作品は、答えを導き出そうとするのがそもそもの間違いで、解説するのはだからやめにする。ただただ愉しめばいい。面白く読むほかに何もするべきことは無い」

そうかもしれない。そうかもしれないけれど、共同作業でアニメーションを作る僕らは答えを必要とするんですね。
監督はその作品を自分のものにして、大勢のスタッフで創作するための共通認識を作り上げなければならないのです。

森見登美彦氏は【恋文の技術】で書いています。
「伝えなければいけない用件なんか何も書いていない。ただなんとなく、相手とつながりたがってる言葉だけが、ポツンと空に浮かんでいる。この世で一番美しい手紙というのは、そういうものではなかろうかと考えたのです」

森見登美彦氏が風船に結んで空に放った美しい手紙を、僕らは形を変えてより多くの人々と繋げる役割を担っています。
作家が選択する「ただなんとなく、相手とつながりたがっている言葉」を手掛かりに、僕らがアニメ化したい理由、大勢の視聴者とつなぎたい理由も探ります。

吉原監督が【有頂天家族 公式読本】の対談で、「『有頂天家族』という小説を、違和感なくアニメ化するうえで実は一番大事だったのは、森見さんの人間性を知ることだった気がしています」と結んでいるのもそういうことなんじゃないかと思うのです。

堀川

日, 8月 4 2013 » 有頂天日記 » コメントは受け付けていません。

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