P.A.WORKS Blog

2014年新人歓迎会

今年は富山本社に13名の新人アニメーターと1名の3Dスタッフが加わりました。
東京のP-10スタジオからも新人制作進行3名が本社にやってきて、夕方から新人歓迎会でした。
今年の挨拶で話したことを覚えているうちに整理して書いておこう。

制作中、物語を考えるとき、その中に3つの物語を意識するようになりました。
成長譚であること、語り継ぎたい大切なことを含んでいること、そして、物語から生まれる新しい価値観。
この「新しい価値観」という言い方が適正なものかは、まだ僕自身言葉を探しています。
もっと腑に落ちる言い方があるような気もします。

 個人にとって物語はどんな意味を持つのか、会社にとってはどうか、と考えるようになりました。
この会社を設立したころは、まだビジョンもはっきりしませんでした。
当時、「この先の自分の物語を思い描けるだろうか。この会社の物語をシナリオにできるだろうか」と自身に問うてみたんですね。
その時点では言葉にできなかったんです。それが自身にとっても会社にとっても良いことには思えませんでした。
もし、この先の起承転結のドラマが描けないのなら、今の状態以上によくなることは無いんじゃないかと思ったんです。
それが嫌だったので、ビジョンを明確にする、物語を思い描くということにを意識するようになったんですね。

 みなさんも、仕事をこなすことに必死な毎日が何年も続くと思いますが、自身の物語というものを思い描いてみてほしいです。
 記憶の本によると、単なる知識としての記憶はすぐ忘れてしまうけれど、その記憶がエピソードと結びついていると思い出しやすいそうです。
その記憶はドラマ・物語に付随しているものだからだと思います。
 そう考えると、毎日の仕事もただこなすだけではなく、自分の長い成長譚の中での行為だと位置づけたほうが、重要な意味のあるものとして自身に記憶されていくと思います。

 アニメーターは、絵は上手いけれど人に説明するのは苦手な人が多いと思いますが、先輩は「後々に語り継いでいくべきこと」を言葉にすることを意識して欲しいです。
それが時間をかけてP.A.WORKSの社内文化になっていくのだと思います。

 P.A.WORKSも、制作するアニメーションの物語を通して「新しい価値観」を描いていきたいと思うようになりました。
僕らが創出した物語に触れた人々が、それをきっかけにして、今までになかった自身の物語をあらたに思い描くことができるような、そんなキッカケの物語だと今は思っています。

 新人も先輩も会社も、それぞれに自身にあった物語のクライマックスを思い描きながら、そこに繋がる今をがんばりましょう。

ではでは。

日, 4月 20 2014 » P.A.WORKS Blog » コメントは受け付けていません。

原画集のはじめに

 この原画集には井上俊之さんが30年間のトライ&エラーを繰り返して培ったプロの実践的技術が込められています。日々試行錯誤しているアニメーターにとっては、個人的課題の解決方法を示唆する内容が数多く含まれていることでしょう。原画を始めたばかりの若手アニメーターには、井上さんが原画に込めた意図の全てを今は読み取ることはできないかもしれません。それでも井上さんのコメントをヒントに、経験豊富なアニメーターがどんなことを意識して描いているのかを吸収できれば、とても参考になると思います。

そんな理由で、この原画集は技術書として折に触れて見返して欲しいものです。5年10年とトライ&エラーを重ねることで、細部にわたって仕込まれた井上さんのこだわりから、経験に見合った新しい発見ができると思うのです。

 いつも気さくに話してくれる井上俊之さんから伝わってくるのは「アニメーション愛」なんですね。それは強度と耐久性のある職人的情熱を核にした愛なんです。

井上さんは手描きのアニメーションに限らず、人形でもクレイでもCGでも、この100年間の古今東西のアニメーションを実によくご覧になっています。時折僕らにもお気に入りの作品や作画のことをほんとうに楽しそうに語ってくれます。まるで新人アニメーターが、「俺もいつかあんな作品を作りたいんだ」と、声を弾ませて夢を語るような情熱が伝わってきます。そんな姿に同世代の僕は軽くパンチを喰らうのです。

 多くのアニメーション業界で働く人と同じように、僕もひそかな夢を持ってアニメーション制作の仕事に就きました。将来の職業を考える頃、「自分もあんな作品を作りたい」と心を動かされた何本かのアニメーション作品に出会ったのです。

最初の仕事はスケジュールも予算も限られたテレビシリーズのアニメーションですが、それでも作品が完成する度に満足していました。ところがある日ふと気づいたのです。自分がこの職業を目指すきっかけとなったあのアニメーションと、今制作しているアニメーションは全く別もののようだ、と。

それでも、いつか自分もあんな完成度の高い作品制作に携わる可能性があるんだ。僕らは同じ土俵に立っているんだ。そこを目指すチャンスは手にしたんだ、というちょっとした興奮が湧き上がってくるんですね。それが、将来の夢に繋げられるよう、日々目の前の仕事を頑張るモチベーションになっていたと思います。パーフェクトなアニメーターと言われている井上俊之さんにも、そんなことを考えていた新人の頃があったと思うんです。訊いたことはないので僕の想像ですけどね。

 たぶん井上俊之さんは、アニメーターを志した頃の情熱そのままに、30年以上まったく失速することなく走り続けているんだと思います。さまざまな理由でアニメーターを続けることができなくなったり、モチベーションを見失う人も多い中で、それを可能にしているのは仕事に取り組むあの姿勢なんでしょうね。

アニメートを極めたいという人並み外れた探究心と、仕事に対するストイックさ、負けん気と、頑固さと、誠実さと、サービス精神と、共同作業をするスタッフとしての良識かな。それらを維持し続ける努力と、どれだけ実績を積んでも褪せることのない「アニメーション愛」なんだと思います。

 ずっと高いところを現役で走り続けている井上さんのような人の存在こそが、アニメーション制作に携わっている僕らには必要なんです。この仕事に就いた頃に夢見ていたことが、いつの間にか一つ一つ形になり始めて満足していくことで、新人の頃の情熱も砂時計のようにゆっくりとこぼれいきます。でも、井上さんのような人が現状に満足せず、同時代にトップを走ってくれていることで、僕らも自分を矯めて新しい目標を定められるのです。

同世代のクリエーターも井上さんの圧倒的な仕事ぶりに触れると、自身の仕事をもう一度真摯に見直すキッカケになるんじゃないかな。
同じ制作現場で仕事をする機会に恵まれた若手アニメーターにとっては雲の上の存在かもしれません。そのときには技術ばかりではなく、井上さんが作画机に座ってただ原画を描いているだけで、その仕事の姿勢に周りのアニメーターが共鳴していく制作現場を是非体験してほしいですね。本人は意識していないでしょうけれど、井上さんの存在効果のおかげで完成した長編アニメーションはたくさんあるのです。

 井上さんには鉛筆(最近はシャーペンらしいですが)を置く日まで、アニメーターを志した頃の情熱を失わない姿を、これからも現役の第一線で僕らに見せつけていただきたい。手描きアニメーションの表現は、「一見頭打ちのようにも見えますが、やはり進歩し続けていると信じています」と、信念を持って描き続ける井上さんの姿から、僕らは勇気を貰うことができるのです。

その姿勢と仕事を、僕ら同世代のためにも、これからアニメーション業界に人生の多くの時間と情熱を注ぐことになる若手クリエーターの為にも、いろんな形で残しておきたいと思い、今回の原画集を編纂させていただくことにしました。

【有頂天家族】で井上さんに担当して頂いた原画は、テレビシリーズでは尻込みするような大変なシーンでした。それでも全く気にすることなくいつも通りに粛々と、膨大な数の原画をスケジュールに合わせて上げていただきました。最後になりましたが、この場を借りてお礼を言いたいと思います。

あ、ついでにもう一言。また近いうちに制作現場で会いましょう!!

水, 12月 18 2013 » P.A.WORKS Blog » コメントは受け付けていません。

有頂天日記 9月28日 

まず始めに申し訳ございませんでしたっ!!!!

9月に入ってからというもの、ブログの更新はほぼ皆無…。

有頂天班の長男として面目ない…。

ちくしょう…ちくしょう…!!

俺なんか金曜倶楽部の鍋になっちまえばよかったんだ!!!

 

…と矢一郎の気持ちも良くわかります。ええ。

しかし黙って鍋になる訳にもいきません。我々には最終話を無事に納品させねばならない責任がありました。

 

そして、この場をお借りして、最終話の納品が完了したことをご報告させて頂きます。

祝・有頂天家族完成なり!

 

 

しかし、正直言ってまだ終わった実感がありません。

きっと明日の放映が無事に終わるまで、肩の荷は降りないのでしょうね。

だから後1日だけ、有頂天気分でいようと思います。

 

ここから先は僕の独り言です。

「有頂天家族」と言う作品に関わらせて頂いて、約4年が経ちました。

その間に色々な事がありました。

 

特にラインプロデューサーという立場で言うならば、もっとも濃密な時間を共に過ごしたのは監督の吉原正行であることは言うまでもありませんし、

それと同時にプロデューサーであり、弊社代表の堀川とも色んな話をしてきました。

 

もともとP.A.WORKSは堀川と吉原が2人で立ち上げた会社です。

会社を立ち上げる時に、どういう経緯があったのかを詳しく聞いた事はありません。

ただ、いつか2人で作品を作り、世に出す事は1つの目標としてあったはずです。

 

その作品の現場責任者になった事は、自分の中で恐ろしいほどのプレッシャーがありましたし、こうして納品が終わった今でもまだ気が抜けないほど、自分の中での割合を大きく占めていた仕事でした。

 

僕はこの作品制作期間を通じて2つ得たものがあります。

吉原からクリエイターとは何なのか、モノを生み出す仕事とその姿勢とは何なのか、現場の有るべき姿を教わりました。

そして堀川からは制作としてクリエイターとどう向き合っていくのかを教わったと思っています。

 

無論、自分がそれらを全て理解し、実践できたのかというとまだまだ足りません。

そこを支えて頂いたのは、この「有頂天家族」に関わって頂いた、メインスタッフの皆様です。このアニメ業界を長く生きてこられた大先輩のスタッフが何人も入って頂けて、初めて完成に漕ぎ着けました。

 

こんな頼りない現場責任者の元で最後までご協力&ご尽力して頂いた、本社のスタッフ、東京のスタッフ、クライアントの皆様、そして直属の制作スタッフ。

全ての方にこの場をお借りして、感謝申し上げます。

 

本当にありがとうございました。そしてお疲れ様でした。

 

吉原正行というクリエイターが、

TVシリーズの初監督として世に送り出した「有頂天家族」という作品に関われた事、

僕は誇りに思って、これから先も仕事していこうと思います。

 

吉原監督。

いや、最後ぐらいは…大将!と呼ばせてもらいます(まだ早いかな(笑))

本当に本当にお疲れ様でした!!

 

 

ラインプロデューサー 相馬

 

 

土, 9月 28 2013 » 有頂天日記 » コメントは受け付けていません。

有頂天日記 9月25日

 日曜日に山路を登りながら、こう考えた。
毎週日曜日の夜に【有頂天家族】二話連続配信を見るのもいよいよ残すところ最終回のみか、と。

「【半沢直樹】は放映で見て、【有頂天家族】は秋の夜長にBlu-ray or DVDで見ようかな」
そう考えていたみなさん! 森見登美彦氏のブログでもご紹介いただいているとおり、第1巻は本日発売です。

 高度に伏線が散りばめられたこの物語。
見る度に発見があるこの物語。
見終わると続きが見たくて止まらなくなるこの物語。
どうぞお手元に置いて何度でもお楽しみください。ませませ。


写真は日曜日にP.A.WORKSワンゲル部で立山を縦走した時のものです。

 雑誌spoon 10月号に掲載されていた森見登美彦氏のインタビューを読んだら、「(小説第二部は)アニメが終るまでには終わりたいと思っています」と書いてありました。

週末の一挙上映でお会いしたら、「本当ですか先生!?」と訊くつもりでしが、氏のブログで先手を打たれていました(笑)
いや、最近ブログが更新されなかったので第二部の執筆も佳境なんだなと…

 毎週日曜日の配信を見ながら個人的に考えたことを有頂天日記に記録していたのですが、10話の視聴を終えたところで煮詰まってしまいまして。
森見作品のヒロイン像について考え始めたのが、どうやら僕には荷が重かったようです。

 清楚でちょっと不思議、でも芯はしっかりしている黒髪の乙女系ヒロインと、謎多きS系サブヒロイン。この二つの女性像と氏との関係についてですね。
森見登美彦氏の深層に隠れている深窓の御令嬢をチラリとでも覗いて見たかった。
もしその女性像を知ることができたら、総一郎がなにゆえ弁天の前では化けられないのか、海星はなにゆえ矢三郎の前では姿を見せないのかを解く鍵になるのではないかと適当に当たりをつけていたのですが…未だ考えがまとまりません。
考えはまとまりませんが、時間をかけて『森見作品のヒロインの謎』のピースを一つ一つ集めてみようと思います。

 【有頂天家族】の制作を通して気づいたことが一つ。
『深く楽しめる作品は魅力的な【謎】に満ちている』ということです。
これは今後の作品作りに良い示唆を与えてくれたと思います。

 物語の世界を冒険する登場人物に同伴して、読者や視聴者は物語から湧いてくる『なにゆえ』の世界を冒険する。
自身の内面を冒険して登場人物(作者)と交差する解答を探る。
それも物語の楽しみ方の一つじゃないかと気づきました。

 会議に上げられた物語について検証するとき、最近はとりあえず、なにゆえ、なにゆえ、なにゆえ、なにゆえ、なにゆえ、なにゆえ、なにゆえ…といっぱいキーボードを打ってみます。
この物語はどれくらい魅力的な『なにゆえ』を蓄えているかを書きだしてみるんですね。

 僕が毎週【有頂天家族】を視聴しながら頭に『なにゆえ』をいっぱい浮かべて妄想を楽しんだように、今企画している作品も僕自身が『なにゆえ』を楽しめるかを知るためです。
その『なにゆえ』に個人的解答があるかどうかを考える前に。

 もう一つ『なにゆえ』で気づいたこと。
作り手にとっては数年間心血を注いだ企画であったとしても、エンターテインメントは観る側にとっては一過性の娯楽作品でもあります。
僕も2時間の映画を観て『ん?』と考えることはあっても、観終えて1日もすれば『なにゆえ』を深く考えることなく『ああ、面白かった』でほとんどは済ませてしまいます。
ところが、TVシリーズは毎週繰り返し、1クールで13回も視聴するものだから、忘れかけた『なにゆえ』が毎週視聴中に復活するんですね。
僕にはこれがいい。直ぐには考えがまとめられなくても、3カ月かけてゆっくり謎解きを楽しめるのです。
TVシリーズ万歳!!

 そんな訳で、謎多き魅力的なヒロイン像と森見作品の関係は、僕の『ゆっくり考えたい、なにゆえリスト』に書き加えられたのです。

 そして…
なにゆえ総一郎は弁天の前では化けられなかったのか?
なにゆえ海星は矢三郎の前に姿を現さないのか?
【有頂天家族】第二部が発売されるまでには個人的解答に辿り着きたいなあ。

堀川

水, 9月 25 2013 » P.A.WORKS Blog » コメントは受け付けていません。

有頂天日記 9月9日

皆様。

お久しぶりです、銀閣山本です。

ついに進化してしまいました。

山本=金閣+2銀閣。

 

昨日【有頂天家族】10話が放映され、残すところ後3本。

物語も現場もいよいよクライマックスを迎えようとしています。

ここからが正念場です、忙しいを言い訳にせずブログも書いていきたいと思います。

相馬Pにはもっと前からブログやれよ!と言われそうですが、気にしない気にしない。

 

それと毛利よ。「極秘ぷろじぇくと」はなくならない。

俺が無くさせはしない。

必ずや日の目を浴びることになるだろう。

その時君は伝説になる。

 

とまぁ、阿呆な話は置いておいて。

昨日放映の10話ですが、なかなかにブラック(black)なバディ(body)の早雲でしたね。

状況を文章にして整理するとなかなかとんでもないです。

・総一郎と早雲、下鴨母が好き。

・総一郎と下鴨母、結婚。早雲「ぐぬぬ」。

・早雲、弁天と金曜倶楽部と組んで総一郎を鍋にする。

・早雲と矢一郎、選挙で競う。

・早雲、選挙に勝つために矢一郎を鍋にする。

鍋にするって・・・・

一緒に鍋を囲うわけではないですよもちろん。

鍋にするって・・・・

 

怖いなおい。なので2文字だけいじってしまいましょう。

・総一郎と早雲、下鴨母が好き。

・総一郎と下鴨母、結婚。早雲「ぐぬぬ」。

・早雲、弁天と金曜倶楽部と組んで総一郎と鍋をする。

・早雲と矢一郎、選挙で競う。

・早雲、選挙に勝つために矢一郎と鍋をする。

ふっふ。なかなか和むじゃないか。

早雲は一緒に鍋を囲むことによって、納得いくまで話し合いをするのだろう。

鍋には不思議な魔力がある。場を和ませる力が。

いつか下鴨と夷川の家族全員で鍋をしているほっこりとした絵を見たいですね。

そーゆー版権をお願いします。

 

では、もうしばらく御付き合いいただければと思います。

 

山本

 

月, 9月 9 2013 » 有頂天日記 » コメントは受け付けていません。

有頂天日記 9月1日

 へいほー!
【有頂天家族】第九話『夷川の娘・海星』をご視聴いただきまして、ありがとうございます。
なにゆえ海星は矢三郎に姿を見せないのか?
なにゆえ総一郎は弁天の前では化けの皮が剥がれるのか?

 先日音響スタジオの控室で偶然弁天役の能登麻美子さんに会いまして。
弁天の話題で話が弾みました。
今は森見登美彦作品【奇想と微笑】を読まれているそうです。
太宰治が好きなのかしらん?
「森見先生は弁天といい、【桜の森の満開の下】の女といい、桜の木の下で出会う女性に一目惚れする傾向があります」と言うと、「坂口安吾の?」と能登さん。
文学少女なのかしらん?
僕の【桜の森の~】は『首遊び』をする怖い女じゃなくて、【新訳・走れメロス】に収められた一篇ですが、どちらの『女』も弁天を理解する手掛かりになるんじゃないかと踏んでるんですけどね!
そんな訳で、森見作品のヒロインについての謎解きはしばらく楽しみにとっておこう。

 本日は以前ツイッターで呟いた『井上俊之【有頂天家族】原画集』についての報告です。
井上俊之さんはアニメーション業界で『カリスマ・アニメーター』と言われる人ですね。
ご本人はそう呼ばれるのを小馬鹿にされているようだと嫌がっているようですが、そんなつもりで言う者がいるものか。
この業界にもしそう言える者がいるのなら一歩前へ!

 作品経歴を見ればお解りのように、普段は劇場作品にひっぱりだこなのでTVシリーズに参加することはめったにありません。
そんな井上さんが今回【有頂天家族】に参加してくださったのは、作品の面白さとキャラクターデザインの魅力、吉原監督との長いつきあいと、P.A.WORKS立ち上げの頃からアニメーターを育成する方針に賛同してくださっているからだと思います。
4年以上前から【有頂天家族】の制作が決まったら参加して頂きたいと(必要以上に)声をかけ続けて、なんとかスケジュールを調整していただけました。

 【有頂天家族】ではトータル155cutの原画と20カットのレイアウトを担当していただきました。
カット数を絞って完成度を上げるよりも、たくさんのカット数を描くことに喜びがあるのだそうです。
その稀有なモチベーションは20代のアニメーターなら解りますが、アニメーション業界では圧倒的マイノリティーでしょうね。

 3話『薬師坊の奥座敷』では西崎源右衛門商店のシーンから担当しています。
奥座敷が街の上空を浮遊するシーンはレイアウトのみです。
暖簾をくぐる矢三郎の何気ない所作だけで、『おお、見せてくれる』と何故か安心します。

 担当していただいたカットの中からアニメーターの参考になりそうなカットを選んで原画集を作りたいと提案したところ、快く承諾してくださいました。
日本のアニメーションの作画技術を完成映像だけではなく、原画やその人の考え方など、いろんな形で残しておきたいと思いました。
 今後も井上俊之さんをはじめ、卓越した作画技術を多くのアニメーターが利用できるアーカイブとして残し続けて欲しいです。
一企業ではなく、もっとアニメーション産業視点での取り組みができないかしらん?

 この原画集はイラストではなく原画のプランニングにウェイトを置こうと思います。プロのアニメーターの刺激になるものにしたい。
 できるだけカット数は多く掲載したいので、井上さんには原画の難易度で初級編、中級編、上級編に選別していただき3冊に分けることにしました。
それぞれ掲載できるのは15~20カットくらいかな。
原画を描くときに井上さんがどんなことを考えたかを知るのも良い刺激になると思い、それぞれのカットについて『作画メモ』をつけていただきました。
これは是非原画と見比べながら読んでいただきたいですね。
この原画から生み出される表現の素晴らしさ、とてもシンプルなタイムシート、次のセクションが仕事をし易いような配慮や、最終画面でリテーク率を下げる配慮と、隅々まで気が配られています。

 例えばですね。
『初級編』C174のコメント。
中身の入った瓶は意外に重いです。
左右に振った二枚の原画の間を、中割しただけではいくら【ツメ】を工夫しても「重さ」が感じられないだろうと思い、方向転換の所で、瓶に【残し】を入れてみました。

cut174絵コンテ

『中級編』C198のコメント。
手前の扇が奥の弁天をよぎる所を、別セルにしたのは、描きこみにすると奥の弁天がとても中割しづらくなると考えたからです。
動画さんが「無用な苦労」をしない様心がける事は大事なことだと思っています。

cut198絵コンテ

『上級編』C222のコメント。
くじらの動きに気を取られ、海面の動きがいい加減にならない様注意しています。
こういったタイミングの違う要素を描きこみにする場合は、あまり変則的(中割がいっぱい入ったり、急に中ナシになったり)に原画を入れずに、なるべく一定のリズムで動きを刻んでゆく気分で原画を描くとミスが少なくなります。

cut222絵コンテ

 コメントの中には「後悔しています」とか、「心残り」なんて正直に書かれているものもあるので、富山本社の原画マンが「井上さんでも上手く描けなかったと思うことがあるんですね」と驚いていました。
それを伝えると、「あたりまえじゃないか!!(笑)」
先日4000本安打を達成したイチローの記者会見のコメントにはとても共感したそうです。
打った数より打てなかったことの方が断然多い。
失敗と向き合って技術を磨き続けるのがプロ。
そんな中でたまに喜びが得られる瞬間がある。それがプロの醍醐味。
といった内容でしたね。

 どんな原画集にするかは設定制作の松子が井上さんに相談しながら進めています。
大きなサイズがいい。できるだけ沢山のカットを載せたい。タイムシートを見ながらパラパラめくれたほうがいい。どんな絵コンテのコマから原画のプランニングをしているかが解かったほうがいい等々。

 先日井上さんが板画家の棟方志功の話しをしておりまして。
超近視の棟方志功が板にオデコがひっつくらい顔を近づけて、板をクルクル回しながらすごいスピードで彫る映像を見たことがあるそうで、その実演の真似をされるのです。
井上さんが棟方志功が創作する姿にインパクトを受けたように、僕も井上さんが実際に原画を描く映像を記録してアニメーターに見せてあげたいとお願いしました。
どこから描きはじめるのか。
下書きをどんな方法で、どれくらいの密度で描くのか。
どんなスピードで描くのか。どんなリズムで描くのか。
アニメーターなら興味があると思うんです。
ですが、ムービーの撮影は駄目なんですって。
以前そんなことを頼まれたのでやってみたけれど、カッコ良くサラサラと描くところを見せなきゃ、と力が入って上手く描けなかったのだそうです。(今回は)残念。

 その他、原画集には『【有頂天家族】の作画で目指したこと』をテーマに吉原監督との対談や、原画を撮影したものを見ながらのオーディオコメンタリーもつけたらどうだろうかと考えています。
原画マンからの質問に答えてもらうのも面白そうですね。
そしてこの原画集が短期的な需要ではなく、作画技術の向上を目指す多くのアニメーターにとって刺激になる本になればと思います。
どうぞお楽しみに。

堀川

日, 9月 1 2013 » P.A.WORKS Blog » コメントは受け付けていません。

有頂天日記 8月31日

最近、曜日感覚がずれていて金曜日記担当なのに1日間違えていた。

今日は8月31日土曜日である。

つまりは特別な意味を持つ日である。

それは何かといえば、夏の終わりを意味するとともに、忘れ物を清算しなければならない。

私も毛玉の頃には忘れ物の清算をするため、泣きながら朝まで徹夜した。

 

あれから約20年。

 

今日私は10話納品という名の忘れ物を清算しにこれから東京へと旅立つ。

徹夜…にはならないと思うが、ギリギリまで粘ってしまった。

 

ついに夏は終わり、残り納品は3話数となった。

11話~13話はハード&ネオハード&テラハードである。

残された夏の延長戦は約3週間。

 

昨夜、毛利が呟いた。

「終わりますかね?」

なので、私はこう言ってやった。

「終わりますかね?ではなく、きちんと終わらせてファンの皆様にお届けするのが、我らが使命であろう!くたばれ!!」

 

ぼちぼち11話以降のチェックムービーが上がってくる。

アレがすごいことになって、アレもこんなことに!?となっている。

スタッフ達はフラフラになりながら、それでも黙々と仕事に向かっている。

もう最終話の納品を迎えるその瞬間まで、彼らの魂が落ち着くことはないであろう。

 

私はここで彼らの姿を最後まで見届けるのが仕事だ。

さて、ではデッカイ宿題を終わらせに向かうとしよう。

 

相馬

 

土, 8月 31 2013 » 有頂天日記 » コメントは受け付けていません。

有頂天日記 8月28日

こんばんは。松子です。
先日、「有頂天家族」の原作本(ハードカバー)の方を見ていると、こんな付箋が残っていました。

これは確か、入社してすぐに相馬さんが松子の机に置いていかれた物ですね。懐かしい!

松子

お疲れ様です。

月曜から仕事をお願いする事があります。

また月曜説明します。

相馬

そして、こちらはシナリオ打ち用に原作に出てくる「場所」に付箋を貼りまくった原作本と、
ロケ用に付箋を貼りまくった地図です。この二冊には長い間お世話になりました。

未だに作品の中で、地図を確認する事が多いので、まだまだ活用しておりますが!

この二冊はある意味、自分にとっての「有頂天家族」に取り組む上での必需品なのです。

かなり使い込んだ感じになっております・・・(笑)

松子

水, 8月 28 2013 » 有頂天日記 » コメントは受け付けていません。

有頂天日記 8月25日

【有頂天家族】第八話『父の発つ日』をご視聴いただきましてありがとうございました。
「泣けた」という反響が多かったですね。
総一郎と赤玉先生の別れのシーンが沁みますなあ。
僕も原作の第五章を読んだときから泣けたので、このシーンの映像は楽しみでした。

「なるほど。乳ではなく、父か…」
人力車の車夫の首が180度回転しているのも好きです。
この人力車は矢一郎が父から譲り受けた宝物ですからね。
きっと父も乳が好きだったのでしょう。

そんな訳で、本日の写真はラストスパートの本社です。

先週の水曜日にオーディオコメンタリーの収録がありまして。

「こんな立派な父親を持った子どもたちは大変だろうな」
森見登美彦氏がぽつりと笑っておりました。
そうなんです。僕の引っかかっている謎はそこなんです。

 【有頂天家族】には未解決の謎がいっぱいあります。
ネタバレになるので今は書けない謎もあるけれど、第八話視聴後にも次々と『?』が湧いてくる。

総一郎が矢二郎に言った「なんとかしてみよう」とはどんな策だったのか?
なにゆえ子どもは四人で、しかもみんな男なのか?
なにゆえ矢二郎が選んだのは蛙だったのか? 
なにゆえ冥界に通じる井戸を選んだのか?
なにゆえ森見登美彦氏は偉大な総一郎を鍋に落とさなければならなかったのか?
偉大な父の死は子どもたち、あるいは森見登美彦氏にとってどんな意味があるのか?

僕の興味は刺激され、『?』の答えを導くために勝手に物語を妄想する。
これがこの作品の魅力の一つですね。
その『?』は、ひょっとすると【有頂天家族】第二部、第三部で明らかになることがあるかもしれないけれど、自分の経験に照らし合わせて腑に落ちる『?』の答えを探るのは面白いものです。
用意された解答があるわけではない。
人それぞれの『?』の答えを促す鷹揚な器がこの王道物語にはあるのです。

 えーと、今回は第八話の視聴を終えて、父であり洛中狸界の王、偽右衛門でもあった偉大な下鴨総一郎と四人の息子たちのことを考えてみます。

森見登美彦氏は、下鴨四兄弟それぞれの中に自分の一部があると言います。
父総一郎は「おまえたちに俺は四つの血を分けた」と矢二郎に語ります。
ということは、父と子の親子関係ではなく、森見先生自身の中の父的な部分と、
ちょっと残念な子供たちの部分の関係という見方もできないかしらん?
と思いまして。

この関係は、一人の人間の意識を司る自我と、個人的無意識に潜むコンプレックスとの関係にも似ていると思うんですね。
コンプレックスは劣等感と訳すのかと思っていましたがこれは違うようです。
それは劣等感コンプレックスというのだそうですが、長くなるので省きます。
どうやらコンプレックスは無ければよいかというとそういうものじゃないらしい。
内面に抱えるコンプレックスを自我が制御、統合していく過程を経て人間は成長するのだそうです。

 僕の身近な制作現場に置き換えてみると、監督とスタッフの関係にも置き換えられますね。
いろんなスタッフが参加して、みんなそれぞれに好みや主張があって、その複合体(コンプレックス)が作品の制作チームである。
その中で全体の共通認識を作りながら一つの纏まりに繋ぎとめているのが監督の方針なんですね。
監督がチーム全体の意識を司る自我ということになります。
自我がコンプレックスを制御する力が弱いと、精神のバランスが崩れるように、監督の統率力が弱ければ、スタッフのバラバラな主張を調整できなかったり、力関係のバランスが崩れて制作チームとして機能しなくなる。

だからと言ってコンプレックスを潰してしまっては、自我との間に前向きな統合と成長が見込めないように、監督とスタッフの間に良い相乗効果は生まれないのです。
時間をかけて牛乳と珈琲の配分を探りながら、珈琲牛乳ができるまで何度も腹を下しながら「運命の出逢い」を待たなければなりません。

 「こんな立派な父親を持った子どもたちは大変だろうな」
というのもなんとなく解かりますよね。
あまりに自我が制御する力が強すぎては、コンプレックスを力で抑え込んでしまうように、監督の統制力が強すぎたり、スタッフの創作エネルギーを必要としないような天才監督では、スタッフから監督に流れる創作意欲を抑制してしまうってことに置き換えられるのかなあ。
何事も制作現場に置き換えないと理解できない頭で考えるとそうなります。

そういえば、先日の吉原監督との対談で森見先生が言われていたことを思い出しました。

自分の頭の中で考えたものだけで作っていたら底の浅い物語になってしまう。
自分の意識していない、もっと無意識の部分から湧き上がってくるものを大切にしたいと。

森見登美彦氏自身が内部に抱えている総一郎と下鴨四兄弟を、この森見作品の創作手法に置き換えるとどうなるだろう。
小説家として創作はこうあるべきだという理想が総一郎で、無意識から湧き上がる阿呆パワーが下鴨四兄弟であるとするならば。
森見登美彦氏の総一郎に対する強い憧れと、その統制によって阿呆パワーとの「運命の出逢い」が損なわれることを嫌う抵抗。
森見先生は自身の中にある理想の総一郎像に対してアンビバレントな気持ちを抱えているのかしらん?

ああ、そうか!
それで森見登美彦氏は自分の創作スタイルを貫くために、自らの手で憧れの理想を鍋に落してサヨナラしたのではないか。
自分の中にある理想を葬ってまでも、阿呆パワーの生命力を大切にしたかったのではないか!

もちろん、先生に訊けばそんなことは考えたことも無いと言われるでしょうけれど、これは僕の『?』の答えを導く妄想の物語だからいいのです!

 そして、この物語に続きがあるとすれば、憧れの総一郎を失った大きな悲しみと苦しみの後に、森見登美彦氏の中にはいずれ第二の総一郎が誕生するはずです。
総一郎ほど理想的な狸じゃないけれど、無意識から湧き出る阿呆パワーを適度に制御しつつ、「頭の中で考えた物語」との運命の出逢いを上手く演出できる器の大きな狸がね。
それが狸界の死と再生の、物語の王道だと思うのです。
それが【有頂天家族】では、矢一郎なのか、あるいは矢三郎なのか、はたまた第三の狸の王の登場か!?

堀川

月, 8月 26 2013 » P.A.WORKS Blog » コメントは受け付けていません。

有頂天日記 8月22日

自分の担当話の納品が終わり、一息ついてる今日この頃、一息つきすぎて先週のブログ更新を忘れていました。

 

1銀閣です。

 

そういえば、山本さんと渡邉さんは今週更新していないので、5銀閣で罰ゲームですよね。

 

先日、相馬Pとの雑談中、こんな話が出ました。

 

「5銀閣溜まっても、捲土重来Tシャツって何気にカッコいいし着るだけじゃ罰ゲーム感ないよなぁ?渡邉もそろそろだし、何なら2人揃って打ち上げで『銀閣山本と金閣渡邉のショートコント』とか」

 

 

 

・・それ、やりましょう!

 

作品が始まる前に動いていた相馬P発案の「極秘ぷろじぇくと」が停滞中の今!

 

この危機を乗り越える術はそれしかないです!

 

先輩方の勇姿、楽しみにしております。

 

 

 

毛利

木, 8月 22 2013 » 有頂天日記 » コメントは受け付けていません。

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