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『幸せに満ちた空間』

 新年明けましておめでとうございます。

 昨日から城端は大雪。
みるみる降り積もった雪を、鈍った体で掘っては投げ掘っては投げ、6キロくらい減量できたんじゃないかな!

 今年はどんな初夢を見ましたか?
僕は覚えていません。初夢は残念ながら覚えていませんが夢の話。

 昨年の11月のこと。夢から目覚めたときに涙を流している自分に驚きました。
見たばかりの夢の内容を、目覚まし代わりに使用している携帯電話にメモしておきました。
メモの最後には『幸せに満ちた空間』と書かれています。
夢の中で僕が最後に立っていた場所は、そこにいるだけで涙が流れるほど『幸せに満ちた空間』だったようです。
これは僕にとっての幸福感で、他人にとってはそうでもないと思うんだけど、でも、他人にも解ってほしいじゃないですか。

 夢を見た数日後、原画マンの大東百合恵に、この『幸せに満ちた空間』の情景を説明しようとしたのですが、どう表現したら伝わるのか分からない。
「絵で描いてみればいいのに」。彼女はとても簡単なことのように言う。
「まてまて。アニメーターだって頭の中で思い描いた情景を紙に描けなくて苦労するのに、絵描きじゃない俺が描けるわけがないだろう」
あ、絵が描ける人は『夢の絵日記』が可能なんだ。なんと羨ましい。
その技術を持たない僕は忘れないように文章で記録しておくしかないわけです。

 11月20日。
 こんな夢を見た。
 商店街に面した広い通りはロードコーンを並べて車両の進入を規制している。
町ではこれから行われる祭りのパレードの準備が進んでいる。
僕は3人くらいの仲間と歩道を歩いている。(誰かは分からない。思い出せない)
商店街の中心から離れるように少し緩やかな坂を登る。
僕らは(あの)スナフキンが最近始めたパン工房に向かっている。(夢の中ではどうやらスナフキンも僕らの仲間らしい。)

 暫く歩いてもパン工房は見つからない。場所は聞いていない。
通りに面した家から一軒奥に入ったところに雰囲気の良いログハウスを見つける。
二階が入口らしいので僕らは木製の階段を登った。
大きなガラスをはめた玄関の扉の右には、これまた大きな木彫の看板が掛かっている。
けれど文字は書かれていない。ただ、モクモクとした積雲(のような形)が彫られている。
どうやらこれは下手だけど、スナフキンが彫ったパンじゃないか。
ここがスナフキンのパン工房にちがいないと思う。

 扉を開けて中に入った。
ログハウスの中は、外観からは想像もつかないほど大きな吹き抜けの空間だった。
僕らが立っているところは四畳半ほどの階段の踊り場になっていて、二階にフロアーは無かった。
建物の片面にある大きなガラス窓を除いた壁は全て木製の陳列棚になっている。
一階から二階の天井までビッシリと。手の届かないところにまでどうやって陳列するのかは分からない。(司馬遼太郎記念館みたいだ。写真でしかみたことないけど)
室内は図書館というよりもずっと工房然として、使用されている木材は使い古され、広すぎるフロアーは早朝の森の中のように薄靄で満たされている。
それが、大きな窓ガラスから差し込む冬の柔らかな光を強調している。(絵が描けたらな…)
室内を満たした光が薄いレモン色なのは、壁の色が干渉しているから?
家具工場の工具の香りが仄かにする。
どうみてもパン工房には見えない。スナフキンがパン工房を始めたって?

 スナフキンの名前を呼んでも返事はない。
人の姿も見えないけれど、ノミを打つ心地よく緊張感のある音が一階から響いている。
その音から、この広い工房で作業するのはスナフキン一人だと分かる。
壁一面の陳列棚にはドッジボールくらいの大きさの、フクロウの木彫が隙間なくビッシリと並べられている。
床から天井まで。パンで作ったフクロウじゃなくて木彫。
1つ手に取って抱えてみる。

 音楽が聴こえている。聴いたことのない曲。
英語なので歌詞は全く理解できないけれど、メロディーがとても優しい。
マイア・ヒラサワの『Still June』に雰囲気は似ているけれど違う曲。

 僕はただそこに立っていただけなんだけど、なんて『幸せに満ちた空間』なんだと、満ち足りた気持ちになった。自然に涙が流れた。
そこで夢から覚めて、涙を流している自分に驚いた。
自分がこんな夢を見るんだと、もう一度驚いた。

 布団から起き上がらずに、聴こえた曲のメロディーを口笛で再現してみた。
とても良い曲だと思ったけど歌えなかった。だって英語の歌詞は分からないから。(夢の主が分からないのに英語の歌詞が流れるなんてことがあるのは不思議です。でも、もうその曲のメロディーは忘れてしまいました。)

 たぶん満ち足りた気分になったのは、僕の記憶に残っている色々な好ましい情景を組み立てて現れた、物を作る広い空間と、優しい光と、物作りの匂いと音が、癒しと高揚感を生み出す情動となって心の底にあるものを揺さぶったのだと思います。
あれが僕には居心地の良い場所なんだと思います。
それと、最後まで一度も現れなかったけれど、「スナフキン」は何でしょうね。
僕の好きな寡黙な職人達の象徴なんだろうか。自律と優しさの象徴なんだろうか。
いつか、何故「パン工房」だったのか、なぜ「フクロウ」の木彫だったのかが解ける日がくるような気がします。

本年もどうぞ宜しくお願いいたします。

金, 1月 4 2013 » P.A.WORKS Blog

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