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第十七夜

エルモというキャラクターをご存知だろうか。

セサミストリートという番組に出てくる、真っ赤な毛で全身を覆われた毛むくじゃらのモンスターだ。

そいつが我が家にやってきた。

引越しをするという友人から、譲り受けたのだ。40センチぐらいだろうか、比較的大柄なぬいぐるみで意外と重量があった。

それもそのはずで、そいつは腹のボタンを押すと手足を振り乱し、笑い転げるという特技があるという。

ためしに腹のボタンを押してみた。
甲高い声で、アメリカ人的な「HAAAHAHAHAHA」という笑い声とともに手足をばたつかせ、勢いあまって転がってしまう。

それでも笑い続け、転がる。まさに七転八倒である。

「笑い」は伝染するというのは科学的に証明されているのだが、その様と笑いっぷりで、こちらもつい笑ってしまう。

  

 

 

 
次の日から妙なことが起こり始めた。
 

 

 

  

夜中に突然、そのエルモが笑いはじめ、叩き起こされた。

スイッチの誤作動かと思い電池を抜いておいた。しばらくは何事も起こらなかったが、再び夜中に笑い声で起こされたのだ。

訝しく思い、ぬいぐるみの電池を確認してみたが、当然のように電池は入っていなかった。

自分の勘違いであろうと、元の場所に立たせてその日はそのまま寝た。

  
 

 

 

翌朝、そのエルモを見ると足を伸ばし座っていたのだ。

 

 

 

笑い転げる機械の構造上、足を伸ばして座るということができるのだが、昨夜は立たせておいたはずだ。

とはいえ、寝ぼけた状態であったというのも確かなので、それも自分の勘違いだろうと思うことにした。
 

 

 

 

数日後、母が死んだ。

 

 

 

 
長い闘病生活を送っていたので、いつかはその日が来るとは分かっていたのだが、やはりその衝撃は大きかった。

ちらりとエルモと目が合ったような気がした。

その後、立て続けに身内に不幸があり、親戚の数が随分と減ってしまった。

そのたびにエルモの甲高い笑い声が脳裏に響いた。幾分気分が悪くなり、エルモと目が合わないように向きをかえた。

 

 

 

  
翌朝、エルモと目があった。

 

 

 

 

半ば「やはり」という思いが胸中によぎったが、さすがに気持ち悪くなったので、その日の朝のうちに燃えないゴミ置き場においてきた。
会社から戻ると、自室のいつもの場所に、さも「お帰り」と云わんばかりにエルモが立っていた。

それから数日、毎朝エルモをゴミ置き場においてきたが、当たり前のように戻ってきた。
さすがにらちがあかない。
解体して捨ててやろうかとも考えたが、中から嫌なものが出てきてら寝覚めが悪いと思いやめておいた。
こいつに何が取り憑いているのかと思い、ケータイで撮影してみた。

  

 

 

  

異様な画面だった。

  

  
  

 

背景は彩度のないモノクロに近い色合いなのに、エルモだけが妙に赤い。頭の上に乗っかっ
ている白い目が、深遠に続く穴のように真っ黒に染まっていた。

  
翌日、エルモは女友達に貰われていった。
それ以来、やつに叩き起こされることはなくなった。
新しい主人に今日も笑いかけているのだろう。

  

「気をつけたほうがいいよ…次はあなたのところにいくかもしれない」

 

檜垣 拝

   

水, 12月 21 2011 » Another怪談百物語

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