P.A.WORKS Blog

道楽と職業の間

これから起業する若いプロデューサーと食事をする機会がありました。

「社長をやって良かったのは、俺が作りたい作品しかやらなくていいこと。それくらいかな」

笑われましたが本音です。今のところは。

 

僕が10年前に会社を立ち上げようとしたとき、親父には「いつまで遊んでいるんだ。家族のことも考えろ」と言われまして。

まあ、傍から見れば道楽ですよね。

傍から見なくても好きなことで飯が食えているんだから、こんな贅沢なことは無い、とは感謝しています。

 

でもですね、いつまでも遊び続けるには、ちょっと考えることもあるのです。

何故って、個人作家の作品でも無い限り、アニメーション制作は、とても多くの人を巻き込む道楽だからです。

制作に関わった全ての人が道楽のつもりなら、作品が認められず、食えないのも自己責任ですが、そんな阿呆ばかりじゃ無い。

道楽と職業、作家性と商品、プロダクト・アウトとマーケット・インを天秤にかけて、同じようなバランス感覚を持った関係者が集まることになるのです。

 

「道楽と職業」は、夏目漱石が明治44年に行った講演のタイトルです。

講演集『私の個人主義』に収められています。文豪曰く。

文学を生業としているけれど、世間に迎合して食っているわけじゃない。

自己本位の探究の結果が「偶然」世間に気に入られて、報酬を得られているにすぎない。

「偶然」職業として成立しているだけなのさ。

道楽本位の仕事の仕方が曲げられないのなら、パトロンがいなければ昔の禅僧程度の暮らしを覚悟するしかない。

世間に反響を起こして報酬を得ることができなければ、餓死するより他に仕方がない、と言い切っています。

 そうだよねえ…。

あ、そうか! 逆に考えよう。

道楽と職業の間に存在する、社会的反響「偶然」を作り出すブラックボックスがプロデューサーの手腕なのか。

今まで僕が我儘にも作りたい作品だけを受けてきて、それでも経営が成り立っていたのは、「偶然」を創出してくれたPに恵まれたんだなあ。

今気付いた。

火, 8月 2 2011 » P.A.WORKS Blog

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