P.A.WORKS Blog

制作デスクの仕事

最近制作現場では「ちょっと先の手」が話し合われています。

P.A.WORKSでもようやく若い制作が育ち始めました。

この機会に、今後P.A.で制作デスクを担当する者に向けて書いておきます。

 

TVシリーズを制作する場合、各話を担当する制作進行と、制作進行を統括する制作デスク、制作ライン全体を統括するラインプロデューサーがいます。

作品内容とは別に、品質の安定は制作デスクの手腕次第です。

体力的にはプロデューサーより激務です。

数字に強い軍曹みたいな人が適任です。

僕は昔「デスクが白と言えば黒いものも白である」、とプロデューサーに教わりました。

今回『花咲くいろは』でデスクを担当する今川拓郎は、いつ見てもエクセルの数値と格闘しているところを見ると、この資質がありそうです。

本人は「俺はクリエーターに向いているんじゃないか」と考えているフシがありますが、今は鬼軍曹になってもらわなければなりません。

制作現場の安定感はデスクができる制作が何人いるかで決まります。

 

デスクの仕事は広範囲に及びますが、その中でもスケジュール管理業務について整理しておきます。

たいていTVシリーズの制作は7本くらい平行して動いています。

話数単位でスケジュールを管理しているのは制作進行です。

彼らは作画、仕上げ、撮影でも、どのタイミングまでにどれだけの物量を動かすかを管理しています。

 

制作デスクは毎朝この各話の物流を把握することから始まります。

P.A.では各話の進捗状況は規定のフォーマットに入力され、サーバー上で管理されているので、誰でも閲覧できるようになっています。

デスクは各話ごとに物流シミュレーションとズレている箇所を指摘して担当と話をします。

数値が把握されているのか、どんなシミュレーションをしているのか、それについてスタッフとどんな対策が話されているのか等。

新人制作の場合は訓練を兼ねてデスクから数値の質問責めにあいます。

「演出の手元に何カットあるの?」

「作監の残り作業は何カット?」

「UP日まであと何日? 1日のノルマは?」

「仕上げ検査とはどんな話をしているの?」

訊かれてから数値を確認しているような制作ではダメですね。

ただ物を袋に詰めて動かしているだけで職務を果たしていない。

デスクは担当話数の制作進行が今意識しておくべき数値をインプットするように、根気良く質問を繰り返し、各セクションとの対話を促します。

スケジュール管理上の危機意識を数値で喚起させることが目的です。

ここまでは各話担当の制作進行のサポート的業務です。

 

その上でデスクは動いている複数の物流を総合して見ています。

例えば、7話数の別々の流れもポイントポイントで合流します。

総作画監督のような「ボトルネック」と言われるセクションですね。

各話の物流速度が違ったり、1本大きく遅れて山が来ると、あっというまにボトルネックセクションが作業の物理的限界を超えてしまいます。

制作進行は担当話数のボトルネックセクションの物流はシミュレーションしていても、前後複数話数が自分の担当話数に及ぼす影響までは大抵計算していません。

前後話数の進捗状況とそれを管理する制作進行の力量から影響を予測するほどの余裕はありません。

複数話数の情報を担当制作に訊いて、ボトルネックセクションに起こり得る問題を事前に把握して整理し、最善の手を打つのがデスクの職務です。

数値のパズルを組みたてるような作業です。

1~2カ月先を見て手を打ちます。1カ月前と2週間前、問題が起こってからでは選択肢の数が全く違います。

この1カ月前の対策が効果的に機能して破綻なく問題が回避されると、デスクは自分の仕事にもやりがいを感じることができるのです。

作品の品質を守ったという自負ですね。

 

今現場で起こっていることが1カ月、2カ月後にどんな結果となるかを一番把握しているのは制作デスクなのです。

それ故、現場では一番ピリピリしていて、最もクリエーターと衝突するのもデスクですが、品質管理上の責任と確信を持っているからこそ衝突もするのです。

 

ただ、数値だけで判断すれば人海戦術、組み換えといった方法は正しいのですが、作品にはスタッフの責任感や挑戦、モチベーションが反映されます。

制作デスクはその狭間で悩みながら落としどころを探るポジションなのです。

その結果がお互いに納得のいくものであったときに、スタッフとの信頼関係が築かれるのです。

一度や二度の経験でできるようになるものではありません。

必要とされる資質は、数値からも衝突からもトラブルからも逃げないことですね。

 

月, 3月 21 2011 » P.A.WORKS Blog

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